猫が吐いたら急性腎不全を疑ってすぐ血液検査することが本当に大事

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猫が吐いていても「毛玉かな?」「胃腸の調子が悪いのかな?」と思いがちです。「猫はよく吐く動物だから」と気にしていない方もいます。

しかし、嘔吐=急性腎不全のサインの可能性があるので、違和感を感じたら一刻も早く動物病院に連れて行くことが大事です。

ゆっくり進行していく慢性腎臓病やほかの疾患の場合も早く受診したほうがよいですが、急性腎不全の場合は、本当に一刻を争います。

我が家の愛猫は何度か経験していて、飼い主の初動の早さの重要性を心から痛感しているので、今回はこのことを書いてみたいと思います。

目次

猫が急性腎不全になると吐くのは明らかなメカニズムがある

「猫が吐く」のは、漠然と体調が悪いから吐くと思いがちです。ただ、急性腎不全を起こしたときの嘔吐には明確なメカニズムがあります。

尿毒素が脳の嘔吐中枢を刺激するから吐く

腎機能が急激に低下すると、本来であれば尿として排出されるはずの老廃物(尿素・クレアチニンなど)が体内に蓄積し、尿毒症の状態になります。体内をめぐる尿毒素が脳の「化学受容器引金帯(CTZ)」という嘔吐中枢を刺激するため、強い吐き気が生じるのです。

元気があるのに吐くこともある

急性腎不全を起こしている場合、多くの場合はぐったりしていますが、何度か経験した我が家の愛猫の場合、元気はあるし食欲もあって食べようとしているのに、いきなり吐く、繰り返し吐く……、というパターンもありました(病院へ行くと腎臓関連の数値が上昇している状態)。

「吐いているけれど、元気そうだから大丈夫」という飼い主判断は過信できないと思っています。普段の猫さんのパターンと異なるパターンで吐く場合は警戒が必要です。

尿毒素が脳を刺激して嘔吐しているかもしれない、と考えてください。

急性腎不全なら時間との勝負なのでとにかく早く病院へ

「毛玉を吐き出した」のような明らかな理由がわからない嘔吐の場合は、「急性腎不全」を原因のひとつと疑って、素早い行動が求められます。急性腎不全になっていたら、時間との勝負だからです。

「おしっこが出ているから大丈夫」は危険な思い込み

「おしっこが出なくなったら猫は危ない」という話はよく知られています。尿路が閉塞して24時間以上排尿できなくなると尿毒症になり、命の危険があるため、すぐに病院へ連れて行くべきとされていますね。

もちろんそのとおりなのですが、ここで注意してほしいのが、腎不全ではかならずしも尿が出なくなるわけではないという点です。むしろ、腎臓の濃縮機能が低下して薄い尿が大量に出る場合もあります。

「おしっこが出ないと危ない」という話の印象が強すぎて、「おしっこが出ているから大丈夫」と勘違いしないように注意が必要です。

※尿閉以外が原因の急性腎不全については、この記事の後半に詳しく書いたので、このまま読み進めてください。

動物病院に行っても吐き気止めをもらって様子見になってしまうことがある

動物病院に慌てて連れて行っても、医師によっては「吐き気止めを飲んで様子を見ましょう」となることもあるようです。

急性腎不全なのに吐き気止め処方で帰されたら大変

急性腎不全を起こしているのに治療せず、前述の「化学受容器引金帯(CTZ)」をブロックする吐き気止めだけ処方されたら大変です。その指示どおりに帰宅後、病状が悪化して慌てて再受診……というケースもあるようです。

「血液検査をお願いします」の一言が大切

とにかく動物病院に連れて行ったら「血液検査」を飼い主側から明確に依頼するのがよいと思います。人間の診察と違って、動物の診察は飼い主の意向に大きく左右される面があるからです。

けして獣医師に任せっきりにはせずに、飼い主が積極的に関わっていく重要性を感じます。「あのとき血液検査しておけば気づけたのに」という後悔をしないために、とにかく血液検査をしましょう。まずは血液検査をするだけでも、わかることがたくさんあります。

少なくとも、腎臓に異変が起きてBUNやクレアチニンの数値が上昇していないか、肝臓に異変が起きていないか、白血球が増加して炎症が起きていないかなどが確認できます。

院内で血液検査できる病院を押さえておくと安心

動物病院によっては院内に血液検査の機能がなく、採血した後に外注となり、結果が出るまで数日かかるケースもあるようです。

我が家の愛猫の命を助けていただいた病院では、採血して10分ほど待つと血液検査の結果が出ます。超音波検査もその場でやってくださるので、すぐに治療開始できたことは大きかったです。

このような背景も押さえつつ、飼い主の直感で一刻を争う事態だと思ったときは、その後のスピーディな治療につながる病院へ急いで行くことが大切だと思います。

猫が急性腎不全と診断された場合に行う治療

ここからは、急性腎不全と診断された場合、その後は何をしていくことになるのか、追記したいと思います。

急性腎不全と診断された場合、まず重要なのは「なぜ腎臓がダメージを受けたのか」という原因の特定です。原因によって治療のアプローチがまったく異なるため、血液検査に加えて超音波・レントゲン・尿検査などを組み合わせて原因を探ります。

急性腎不全の原因は、障害の発生部位によって「腎後性」「腎性」「腎前性」の3つに大きく分類されます。それぞれの特徴と治療方針を知っておくと、獣医師の説明を理解しやすくなりますし、飼い主として適切な質問もできるようになります。

❶ 腎後性:尿の排出経路がふさがっている

腎後性は、腎臓で作られた尿が体外へ排出されず、行き場を失った尿が腎臓に逆流・圧迫して機能障害を引き起こす状態です。猫では急性腎不全の原因としてこの腎後性が最も多く、最優先で理解しておくべきタイプといえます。尿のとおり道(尿路)のどこが詰まるかによって、大きく「尿道の閉塞」と「尿管の閉塞」に分かれます。

◆尿道閉塞:オス猫にとくに多い緊急事態

尿道閉塞は、膀胱から体の外へ尿を排出する「尿道」が詰まってしまう状態です。オス猫はメスに比べて尿道が細く長いため、結石や結晶が詰まるリスクが高く、猫の下部尿路疾患(FLUTD)のなかでも代表的な救急疾患として知られています。

症状は比較的わかりやすい傾向があります。

  • トイレに何度も行くのに尿が出ない
  • 排尿の姿勢をとったままうなる
  • 陰部をしきりに舐める

こうしたサインが見られたら、尿道閉塞を強く疑ってください。便秘と見間違えて受診が遅れるケースもあるため、注意が必要です。

治療では、まず膀胱穿刺(針を刺して膀胱内の尿を抜く処置)で圧迫を緩和し、その後カテーテルを尿道に挿入して閉塞を洗浄・解除する処置を行います。閉塞が繰り返される場合には、尿道を広く開口させる「会陰尿道瘻設置術」と呼ばれる外科手術が検討されます。閉塞さえ早期に解除できれば、腎機能の回復が見込めるケースは少なくありません。

◆尿管閉塞:見つけにくいが深刻な閉塞

尿管閉塞は、腎臓と膀胱をつなぐ「尿管」に結石が詰まってしまう状態です。猫の尿管は直径わずか0.4〜0.5mm程度と非常に細いため、小さな結石や砂状の結晶でも簡単に詰まってしまいます。

尿道閉塞と異なり、飼い主が異変に気づきにくいのが尿管閉塞の厄介な点です。猫の尿管結石の90%以上はシュウ酸カルシウムという成分で構成されています。この種類の結石は食事療法で溶かせないため、内科的な治療だけでは限界があります。点滴などで尿量を増やし、結石を膀胱側へ押し流す試みが行われますが、成功しない場合は外科的な介入が必要になります。

じつは、我が家の愛猫は2度、尿管結石で手術を経験しています。また新たに記事にまとめられればと思っていますが、本当に一刻を争う事態であり、大変なことがたくさんありました。どうぞみなさま、猫が吐いたらすぐに病院へ行ってください。

外科治療にはいくつかの方法があります。結石を直接摘出する「尿管切開術」や、傷ついた尿管を切断して膀胱に直接つなぎ直す「尿管膀胱吻合術」のほか、近年では「SUBシステム」と呼ばれる治療法もあります。

SUBシステムは、シリコン製のカテーテルで腎臓と膀胱を直接つなぎ、詰まった尿管を迂回して尿を流すバイパス手術です。アメリカ獣医内科学学会でも推奨されており、退院率94%という良好な成績が報告されています。

いずれにせよ、尿管閉塞は時間が経つほど腎臓へのダメージが蓄積します。早期発見が本当に大切です。

❷ 腎性:腎臓そのものが損傷を受けている

腎性は、腎臓の組織自体が直接ダメージを受けているケースです。腎性の原因としては、毒物・薬物が約60%、感染症が約30%、腫瘍が約10%という報告があります。

◆ユリなどの中毒によるものが多い

中毒によるものがとくに多く、猫で最も警戒すべきはユリ科の植物です。花びら1枚を噛んだだけ、花粉を舐めただけ、花瓶の水を飲んだだけでも致命的な腎障害を引き起こす可能性があります。ほかにも、不凍液や保冷剤に含まれるエチレングリコール・人間用の鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)・農薬・除草剤なども腎毒性物質として知られています。

◆感染症は腎盂腎炎が代表的

感染症としては、細菌感染による腎盂腎炎が代表的です。大腸菌などが尿管を通じて腎臓に到達し、広範囲に炎症を起こすと腎機能が急激に低下します。免疫が関与する糸球体腎炎も原因のひとつに挙げられます。

我が家の愛猫は、子猫の頃に原因不明の急性腎不全で1週間ほど入院したことがあります。何かの中毒だった可能性があります。また、前述の尿管結石の術後の経過で腎盂腎炎になり、ここから腎臓の数値が悪化したこともありました。これらのケースでも、とにかくすぐに病院に行って治療開始することが重要でした

治療は、まず輸液療法で腎臓への血流を維持しながら、原因物質の排出を促す処置が行われます。中毒の場合は可能であれば催吐処置や活性炭の投与を行い、感染症が原因であれば抗菌薬を使用します。腎臓にまだ一定の機能が残っていれば、尿を生成して毒素を排出する力がありますので、輸液を続けながら尿細管の回復を待つ形になります。

❸ 腎前性:腎臓に届く血液の量が減っている

腎前性とは、腎臓そのものには問題がないものの、腎臓に流れ込む血液の量が減ってしまい、十分にはたらけなくなっている状態を指します。

重度の脱水・大量の出血・心臓病(心筋症など)による心拍出量の低下・ショック状態・熱中症などが代表的な原因です。ほかの病気で食欲が落ち、長期間十分に水分を摂取できなかった結果として脱水が進行し、腎血流量が低下するというパターンもあります。

治療の方針としては、腎臓への血流を回復させる処置が中心です。入院での静脈点滴(輸液療法)によって脱水を補正し、循環を安定させていきます。状態によっては昇圧剤や輸血が必要になる場合もあります。

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腎不全の場合は、血液検査に明らかな異常値が出ますので、とにかく早く受診して血液検査をすることが大切です。繰り返しになりますが、「一日の様子見」がその後の道を分けることもあるので、とにかく早く受診していただければと思います。

参考情報:

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