私が大好きで愛用しているキッチン道具の筆頭は「鉄の中華鍋」です。
でも、使いこなせるようになるまでは、ちょっと時間がかかりました。
コツさえわかれば難しいことはなかったので、その体験談を書こうと思います。
気負う必要なし・絶対やってはいけないことはない・適当OK
「鉄のフライパン」「鉄の中華鍋」というと、
- 「育てるためには●●してはいけない/しなければならない」
という理論が先行して、敷居が高くなっている印象があります。
でも、実際に自分で使ってみて、また使っている人の体験談を聞いて思ったことは、
- 「もっと適当で全然いい」
ということです。
例えば「絶対に食器用洗剤で洗ってはいけない」とよく聞きますが、実際にはクレンザーや洗剤を付けてガシガシ洗っている人もいます。
「使い終わったらすぐに洗わなければならない」についても、ご飯を食べ終わってから食器と一緒に洗う人もいます。
「終始お店のような強火で使う」についても、いやいや、弱火でも十分においしい料理ができます(むしろ強火すぎない方が良いシーンも多々あります)。
禁止事項に過敏になるよりも、むしろいろいろやってみる中で、自分にとって使いやすい使い方を見つけていくのが、鉄道具の醍醐味ではないかと思います。
使っているのは山田工業所 鉄打出片手中華鍋(1.2mm)33cm
私が使っている中華鍋についてまずお伝えしておくと「山田工業所 鉄打出片手中華鍋(1.2mm)33cm」というものです。
Amazonでも売っていますが、私は最初の「空焼き(焼き入れ)」の工程を家でやり切る自信がなかったので、空焚き済のものを楽天で買いました(購入したのはこちら)。
フライパンとしても併用したかったので、オプションで「平底」に加工してあるものを購入しています。
厚い鉄と薄い鉄ではまったく違う
1.2mmはかなり薄手。実はこれが、使いこなす方法を探索する上でネックになっていたことに気づいたのは、しばらく経ってからのことでした。
鉄鍋を使い始めた初期の頃、「鉄のフライパン」の使い方を紹介したブログ記事をよく見ていました。しかし真似してもうまくいかないんですね。
それもそのはず、「鉄」という共通項よりも「厚み」の違いが、非常に大きな差を生み出しているからです。
例えば、鉄のフライパンで有名なTurk(ターク)の厚みは、2.5mm〜3mmあります。
1.2mmの中華鍋を使っている私が、3mmのTurkを使っている人のブログを読み込んでも、モノが全然違うわけです。
「鉄」と一口に言っても、厚い鉄と薄い鉄ではまったく違う。
鉄の中華鍋を使いこなしたい場合は、フライパンではなく中華鍋の体験談を参考にするべきだと気づいてからは、ひたすら自分の目の前の中華鍋と向き合って試行錯誤するようになりました。
鉄の中華鍋を焦げ付かせない方法
「空焼き」や「慣らし炒め」などの、中華鍋を購入したときにやるべき工程(取扱説明書に書かれている事前処理)が終わったら、鉄の中華鍋を扱う上での第一関門は、
- 焦げ付かずに使えるようにする
ということだと思います。
私も最初は、とにかく焦げ付きに困りました。
それまで使っていたテフロン加工のティファールに何度戻ろうとしたことか。
最初の熱し方と油の扱い方
一般的には、焦がさないコツとしては、
- 使う前にしっかり鍋を熱する
- 油をたっぷり使う(油返しする)
ということがいわれます。
ですが、あまり強火でもうもう煙が出るほど熱するのは怖いですし、油を使いすぎるのも太りそうで嫌だと思っていました。
私が使っている1.2mm厚の中華鍋に関しては、下記のやり方で焦げ付かなくなりました。
- 中華鍋を強火にかけ煙が出るまで熱する
- 煙が出たら弱火にして料理に使う分だけの油を入れる
- 中華鍋を回して油をまんべんなく行き渡らせる
- 食材を入れて必要な火加減にする
煙が出ている状態で2分熱する……なんて説明も見掛けたことがありますが、私は全然そんなに熱しません。
煙が少し出始めたら、すぐに弱火に落としてしまいます。
油を入れ、食材を入れてから、強火で調理するなら強火に変更します。
そうすると、無駄にバチバチ油が飛んでキッチンがベタベタになったり、中華鍋の様子に合わせてバタバタ焦ったりせずに済みます。
その代わりコツは、油を入れる前に煙が出るところまでは熱しておくことです。
焦げを毎回しっかり落とす
中華鍋の熱し方や油の入れ方をきちんとしているのに焦げ付いてしまう原因の多くは、「前回の焦げ付きを落とし切れていないこと」にあると思います(私はそうでした)。
初期の頃は不慣れで焦がしがちなのに、その焦げが残った状態でまた次のチャレンジをするので焦げ付く。そして嫌になる……、という悪循環に陥りがちです。
これを解決するためには、焦げがしっかり落とせる道具を準備しておくこと。
だんだんと焦げ付かなくなるので使わなくなるのですが、初期は用意しておいた方が良いです。
「ささら」と、ハードな焦げを落とせるスポンジの2つがあれば十分です。
焦げ付いたら、その度にしっかりと焦げを落としておきます。
焦げが残っていると、中華鍋の内側を指で触ったときに、ザラザラとした感触があります。それがツルツルになるまで、磨いておきます。
これをやるようになってから、みるみる私の中華鍋は焦げ付かなくなりました。
一度焦げ付かなくなると、もうその後は、使った後にこする必要はありません。
お湯でザザッと流すだけで、ツルンときれいになってしまうくらい、鍋肌がなめらかになっていきます。
焦げ目が付くまで肉を動かさない
肉を焼くときにやりがちなのが、焦げ付かないようにと焦って、すぐにお肉を動かしてしまうこと。
肉を中華鍋に入れた直後は、鍋肌にくっついているので、ここで無理やり動かすと、肉が剥がれてこびりつき、そのまま焦げてしまいます。
肉に焼き目が付いてこんがりしてくると、勝手に動くようになりますから、それまでは無駄に触らないようにしましょう。
水分は飛ばすが油は塗らなくても問題なし
鉄のフライパンや中華鍋のお手入れ方法として、
- 使用後は薄く油を塗っておく
というのがあります。
これ、私はやっていません。どういう原理なのかはわかりませんが、やらなくなってからの方が焦げ付かなくなりました。
油に埃が付きそうですし、酸化した油まで食べることになりそうですし、何だか嫌だなと思っていたので、この工程が省けたのは良いことでした。
今は使い終わった中華鍋をお湯でザザッと洗ったら、そのままコンロに30秒くらいかけて熱し、水分を飛ばすだけです。
焦げ付きがちな時期は油っぽい料理を選んで育てる
鉄の中華鍋は、最初焦げ付きやすくて嫌になってしまったとしても、それを我慢して使い続けるごとに、焦げ付きにくくなっていきます。
といっても、何週間も何カ月もかかるような話では全然なくて、コツをつかんで3日くらい我慢すれば、波に乗ることができます。
最初の頃は、油っぽい料理から優先的に鉄の中華鍋を使うようにすると、スムーズに焦げ付かないモードへ移行してくれると思います。
例えば、皮付き鶏もも肉のソテーとか、角煮の豚肉に焦げ目を付けるとか、水分・野菜・卵・豆腐などを使わない、肉だけのメニューが向いています。
表面だけ焦げて中に火が通らない?薄い鉄は薄い鉄なりの火加減で
私が愛用している鉄鍋は1.2mmなので、薄い鉄なりの火加減について書いておきます。
火加減の調整がゆるやかという勘違い
「鉄といえば、蓄熱性に優れ、火加減の調整が穏やかにできる」と思っていました。
鉄製のフライパンは蓄熱性が高く、焼き物や炒め物、すなわち肉料理・餃子・チャーハン・野菜炒めに適しています。
蓄熱性とは、フライパンの板に熱を蓄えておく力のこと。蓄熱性が高いと、食材を投入しても温度が下がりにくく、高温を保ったまま一気に加熱できます。ムラなく食材に火を通すことができるので、味のブレがなくなります。
nanapi [ナナピ]
でもこれは、2.5mm〜5mmもある厚い鉄のフライパンの話でした。
私はしばらく“厚い鉄フライパン感覚”で1.2mmの鉄鍋を使っては、
- 表面だけ焦げ付いて中に火が通らない
というトラブルに見舞われていました。
失敗を繰り返しながら、「私の中華鍋は薄いので火加減の調整がダイレクトに鍋の中に伝わる」という特徴を持っていることに、だんだんと気づくことになります。
1.2mmの中華鍋は、火加減を強くしたときも弱くしたときも、すぐに鍋の中の食材に反応が伝わります。
鉄の厚みが薄い分、火と食材の媒体としての存在感が薄いのです(火の上に直接食材をかざして調理している方へ近づく感覚です)。
だからテフロン加工のフライパンを使っていたときよりも、強火の時間は短くて良いし、弱火の時間は少し長めくらいがちょうど良いとわかってきました。
このコツさえ分かれば、あとはお手の物です。
特にお肉料理は、本当においしく焼き上げることができるようになりました。
テフロン加工のフライパンでは叶わなかった、
- 「外はパリッと、中はふっくら柔らかジューシー!!!」
という世界が、100%広がるようになったのです。
特に「柔らかさ」は特筆もの。
テフロン時代に、肉を柔らかく焼くために、ヨーグルトに漬け込んだりフォークでたくさん穴を開けたり筋を切ったり、いろいろな努力をしましたが、すべてすっ飛ばして、ただ鉄鍋で焼くだけでこんなに柔らかくなるとは知りませんでした。
「中華鍋だから強火で」という思い込みは捨てた
もうひとつ、
- 中華鍋は終始、中華料理店のように強火で使った方が料理がおいしくなる
という勘違いもしていました。
「家庭用のガスコンロでは中華鍋には火力が足りない」という話をどこかで聞いて、とにかく強火で使うものなんだ、と。
しかし、その思い込みは早々に捨てました。
私は鍋を振り続けて炒めるような使い方はしておらず、基本的に鍋は置きっぱなしです。強火を長めにすると、あっという間に焦げ付きます。
肉の焼き始めに表面に焼き目をつけて焼き固めるときや、生野菜の炒め始めは強火にしますが、それ以外は基本的に弱火〜中火で、うまくいっています。
使うガスコンロも、我が家は三口のガスコンロで、それぞれの大きさが大中小と違っていますが、中のガスコンロを使っています。
鉄の中華鍋を使い始めたばかりの頃はもっぱら「大」のガスコンロの強火でやっていましたが、「中」に移動してから調子が良くなりました。
使えるだけ一生使いたい鉄の中華鍋
テフロン加工のフライパンの寿命は、数年といわれます。
私も鉄鍋を買うまでは、ずっとティファールを買い替えながら使ってきました。
うっかり傷が付いたり、テフロンが剥げてきたりすると、その度にガッカリしていたものですが、そんな気遣いなくとも傷つかない鉄鍋は、実はとても使い勝手が良いです。
ガシガシ鉄のフライ返しでこすっても、鉄鍋の中でキッチンはさみを使っても、強火で熱しても、傷まないのですから。
「鉄のフライパンや鍋は一生モノ」とよく聞きますが、私の中華鍋が一生持つかどうかは、わかりません。
タフに毎日使う中華料理屋さんの中華鍋は、穴が開くこともあるそうですから、いつか穴が開くかもしれません。
一般家庭でも「30年愛用した中華鍋に穴が開いた」というコメントをどこかでお見かけしました。
五徳をこすって振るような使い方はしていないので、何十年も長持ちしてくれるとは思いますが、とにかく穴が開くまでは毎日、この鉄鍋と過ごしていきたいと思います。
何十年も使い続られる安心感って、とても大きなものがあります。大好きなものは、できるだけ長くそばにいて欲しいですからね。
もしいつか遠い未来に穴が開いたとしたら、修理できるのであれば修理し、修理できなかったとしたら捨てずにおいておくでしょう。
そこまで愛用できるように大事にしていくことが、日々の暮らしのひそかな楽しみになっています。