ハンバーグのひき肉は、手でこねるべきという話もあれば、手でこねすぎてはいけないという話もあります。
テレビでプロの料理人がハンバーグを作っている様子を見ていても、手でガンガンこねている人もいれば、一切、手では触らないという人もいます。
それぞれのメリット・デメリットを整理した上でたどり着いた方法は「ビニール袋でスピードこね」です。
ハンバーグのタネをこねる理由
まず、ハンバーグのタネをこねる理由を復習しておきます。
ひき肉に塩を加えて練ると、肉に含まれる筋原線維たんぱく質(ミオシンとアクチン)が塩水に溶け出し、互いに結びついて「アクトミオシン」という網目構造をつくります。この網目構造がハンバーグに粘りと弾力を生み出し、内部に「水分」を閉じ込めるはたらきをしてくれます。

ハンバーグだけでなく餃子やソーセージ・かまぼこなどの練り物にも共通する原理で、一口食べた瞬間にジュワッと肉汁があふれ出てくるような、ジューシーな仕上がりにするには欠かせない工程です。
塩を加えてこねる工程を省略すると、タネの結着が弱くなり、焼いたときに崩れやすくパサついたハンバーグになってしまいます。
ハンバーグのタネをこねすぎてはいけない理由
逆に、ハンバーグをこねすぎてはいけない理由は、肉に手指の熱が伝わって脂肪分が溶け出してしまうからです。
先ほど述べた「アクトミオシン」の形成に重要なミオシンは熱に弱く、20〜30℃程度で変性が始まるといわれています。手の温度は約36℃ありますから、長くこねるほど肉の温度が上がり、脂肪が液状に溶け出すだけでなく、たんぱく質の結着力そのものも低下してしまいます。
水分がジューシーさを生み出すうえで重要なのは前述のとおりですが、「油分」もおいしさには欠かせない要素です。
「ジューシーなハンバーグ」の双璧をなすのが水分と油分。こねが足りなければ水分が足りなくなるし、こねが過ぎれば油分が足りなくなる、というわけなんですね。
この矛盾をどう解決するかが、ハンバーグづくりの重要ポイントです。
よく冷やしたひき肉をビニール袋に入れて素早く練る
以上の前提を踏まえつつ、私のやり方は、
- よく冷やしたひき肉をビニール袋に入れて速攻で練る
というやり方です。
チルド室に入れてよく冷やしておいたひき肉・塩・調味料をビニール袋に入れて、空気を抜いて口を縛ります。
※卵・パン粉などのつなぎ・たまねぎなどの野菜はこの段階では入れません。

これを、パン生地をこねるような要領で、短い時間で素早く練ります。
こね方のイメージ動画↓
こねている時間は1分程度でしょうか。全体に白っぽくなったらすぐ終了します。

ここまでできたら、冷蔵庫のチルド室に入れて休ませます。
このあと、ハンバーグに入れる野菜やほかのおかずなどの準備をして、成形する直前までチルド室でよく冷やしておきます。
ボウルでこねるよりもずっと早くこね終わる
ビニール袋に入れてこねると、激しく強くこねても飛び散ったりしないので、ボウルでこねるよりもずっと早くこね終わります。早くこね終われば、手指の熱が伝導する時間が少なくて済みますから、油分の流出につながりません。
肉に触るのはビニール袋ごしで直接手指が触れるわけではないですし、調理台側に圧をかけるようにして練っていくことも、熱が伝わりにくいポイントです。
手が汚れない・洗い物が減るという利便性もうれしいところですが、それ以上に「短時間で十分にこねつつ、温度上昇を最小限に抑えられる」という科学的な合理性こそが、ビニール袋こねの最大のメリットだと感じています。
チルド室でタネを寝かす間に油分は固まり水分は引き出される
ハンバーグを作る日は、その日の下ごしらえの最初の段取りで、この「ひき肉こね」を行います。その後の工程を行っている間、冷蔵庫のチルド室で寝かしておきたいからです。夕食にハンバーグを作るとして、午後に時間があれば、ひき肉をこねる工程だけ夕食の数時間前に行っておくこともあります。
チルド室でタネをしっかり冷やすと、2つの良い変化が起こります。まず、溶けかけた油分が再び固まり、焼いたときの流出が抑えられます。そして、塩と反応した筋原線維たんぱく質からは水分がじわじわと引き出され、アクトミオシン同士の結びつきも強まって、タネ全体の弾力が増していきます。
つまり、寝かせる時間を長めに取れば、「油分はしっかり固まり、水分はたっぷり蓄えられた」理想的なタネに近づいていくわけです。
この後は好きなものを追加して成形して焼けばOK
この後は、冷やしておいたタネに好きなつなぎや野菜などを追加して、成形して焼けばOKです。水分も油分もしっかり閉じ込められたおいしいハンバーグに変身します。
ちなみに、私はつなぎは入れないハンバーグが好きで、この〈下ごしらえをしたお肉にみじん切りのたまねぎを加えただけ〉のシンプルなパターンをよく作ります。
パン粉や卵が入っていないとハンバーグは固くパサパサしがちですが、この下ごしらえに変更してからというもの、いつも柔らかくてジューシーなハンバーグができています。塩とこねの科学をきちんと押さえれば、つなぎに頼らなくてもここまで変わるんですね。

